平成25年度 助成研究の成果発表 香ノ木貴子氏(元岐阜県立看護大学)

1.タイトル:[Research article]

急性疾患で短期入院をした幼児に就労する母親が付き添う体験;子どもの発症から入院の決定を経て、付き添う生活を始めるまで

2.主任研究者

香ノ木貴子氏、元岐阜県立看護大学

3.結果公表

小児看護 2016年10月号 第39巻第11号 通巻第497号、へるす出版に掲載

4.掲載書籍

5.抄録

[目的]
子どもは、乳幼児期に一過性の急性疾患に罹患しやすく、短期間の入院中は母親が中心となって付き添う。近年の女性の就労傾向を鑑みて、この入院に付き添う母親の体験をより質的に明らかにするため、本研究は、急性疾患を患った子どもの入院が決定し付き添う生活を始めるまでの母親の体験を中心に分析し、付き添う家族の思いを尊重した看護のあり方を見出すことを目指す。
[方法]
急性疾患による短期入院をした子どもの初めての入院に付き添ったという6歳未満までの幼児の就労中の母親に研究協力を求めるため、X県内にある定員100名以上の認可保育所(20か所)に在籍する園児の保護者に研究参加を募るチラシを配布し、最終的に承諾を得られた6名の母親を対象に、子供の病状、職場への報告、入院決定直後や付添いの状況についての語りを引き出す半構造化面接実施した(平均所要時間58分)。対象の同意の基に音声を録音し、それに基づき作成した逐語録データの意味内容を複数研究者で検討、分析し、コード化、カテゴリー化を行った。
[結果]
母親は、【日頃から仕事との両立を工夫(する)】し、子どもの発症に気づいた時から、常に【病気の子どもの様子を見守(る)】り、仕事も含めて【先のことを見越して考え(る)】、【この状況で出来ることを(する)】し続けていた。受療先の医療者の【言われるままに合わせ(る)】ながら、急に入院が決定した展開に【揺れ動く気持ちを体感(する)】しつつ、入院に【“付き添わないと”という思いを強く(する)】していた。そして、職場に急に【休みを願い出ることに躊躇(う)】いながらも、子どもと自分のために【これから生活をする場所を見渡(す)】し、付き添う生活を始めるという9つのカテゴリーが抽出された。他に、医療者が家族の付き添いをごく当然のように捉えているため、母親は自分が付き添うことの必要性をより強く感じるとともに、医療者、特に看護師からの関わりや口頭での説明が乏しいと感じていることがわかった。
[考察]
母親の思いを尊重した看護のあり方として、付き添う家族も看護ケアの対象であることを改めて位置づけし直し、医療機関を受診した時点から付き添う家族の安寧を整え、子どもに付き添う母親が、これから付き添う場となる環境を把握しやすいように、直接的な援助が意図的になされることが求められる。

日本看護学校協議会共済会
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