トラブルQ&A

法律Q&A part 1

息子は大学4年生で、これまでマンションに56,000円の家賃を払って住んできました。ところがこの春にマンションのオーナーが倒産し、破産手続きに関連した書類が送られてきましたが、その中で、これまでどおり家賃を払う旨の陳述書を出すように求められました。同じマンションに住む友人たちと、その件を話してみると、だれもその額では入居していないことを知りました。入居者が減ってきたために値下げをしたらしく、同じ年に入った友人は1,000円引き、その1年下の学生は3,000円引きだというのです。部屋ごとのランクなどもないはずなのに、わずか何日かで家賃が違うというのはおかしいのではないでしょうか。今、同じ家賃を払い続けることを求められた場合、過去の損失やこれからの家賃について、不利益として交渉することはできるでしょうか。

アパートの部屋を新規に借りる場合の賃料は、貸主と借主との間の契約(賃貸借契約)で定められます。

貸主が賃料を決めるにあたっては、特に法律上の制限はありません。近隣の同じ種類の建物の賃料の相場や、部屋の位置・間取り等に比べてあまりにも家賃が高ければ借り手はつかないでしょうから、貸主としてはそれらの事情を勘案して、採算の取れる家賃を設定するものと思われます。

別の部屋を別の借主に貸す際、異なる家賃を設定することも貸主の自由です。

ご相談によれば、入居者が減ってきたため貸主が値下げをしたらしいとのことですが、部屋を借りてもらうために賃料の値下げをすることも貸主の自由ですので、早くから入居している借主の方が新しい借主よりも家賃が高いという状況も有り得ることになります。どのような相手とどのような内容の契約をするかは、国家の干渉なしに契約当事者の自由な意思で決定できるとの契約自由の原則が、ここでは当てはまるといえるでしょう。

契約を更新して部屋を継続して賃貸する場合も、貸主は自由に賃料を定めることができ、家賃を他の部屋と合わせる義務はありません。

借主としては、契約の際に定められた家賃で借りることを承諾していますので、アパートの別の部屋が自分の部屋より低家賃だったからといって、直ちに家賃の減額を請求できるわけではありません。借主は契約条項に拘束されますので、そこで定められた賃料を支払う義務があります。

ただし、借主としては、近隣・同種の家賃の相場が下がっているという状況が明らかであれば、まずは貸主と交渉して以後の賃料の減額を求めてみると良いでしょう。

さらに、貸主に交渉に応じてもらえなかった場合、借主としては、賃料減額を求める調停や訴訟を起こすことも考えられます。

借地借家法第32条は、「建物の借賃が、土地若しくは建物に対する租税その他の負担の増減により、土地若しくは建物の価値の上昇若しくは低下その他の経済事情の変動により、又は近傍同種の建物の借賃に比較して不相当となったときは、契約の条件にかかわらず、当事者は、将来に向かって建物の借賃の額の増減を請求することができる。」として、賃料の増・減額請求権について定めており、貸主あるいは借主は、裁判所に対し、客観的に相当な賃料額の判断を求めることができます。

しかし、家賃をどう定めるかは個別の状況に応じた貸主の自由な判断に任される部分が大きく、アパートの他の部屋より家賃が数千円高いというだけでは、借主からの減額請求が裁判所で認められることは難しいと思われます。さらに、同様の理由で、過去に支払った家賃との差額が損失であるとして返還を求めることも難しいでしょう。

なお、公共的性格を有する公団住宅の賃料に関する紛争においても私法上の賃貸借関係が適用され、経済事情の変動により古くからの借主に対する家賃が不相当に低額となったことから、より高い家賃で入居した新しい借主との均衡を図るための、貸主からの家賃の増額請求が認められています(千葉地裁松戸支部平成4年9月4日判決)。

<弁護士 山田恵>

アパートを借りて一人暮らしをしています。先日、大家さんから、家賃を値上げすると言われました。私としては、アパートの場所や間取りなどの環境、近隣の家賃の相場から考えると、これまでの家賃で妥当だと思っています。それでも、借りている立場としては、家主の要求に応じるしかないのでしょうか。

賃貸借契約においては、契約の途中での家賃の変更は可能で、契約書に家賃の変更について定めがなくても増額することができます(借地借家法32条)。

不動産に課される税金などの負担が増加したとか、地価が上昇した、周辺の家賃の相場が上昇したなどの事情の変化が生じた場合、それまでの家賃が適切でなくなることがあるからです。

家主から賃料値上げの申出があった場合、借主としてはまず、値上げの理由を明らかにしてもらい、値上げの理由や値上げ額が相当なものかどうかを判断することが大切でしょう。

値上げが不当と判断され家主の要求に納得がいかない場合であっても、賃料の支払を拒み続けると、債務不履行であるとして契約を解除される可能性があります。

借主としては、相当と判断する賃料を支払うことになるでしょうが、家主の側で、値上げ後の賃料でなければ受け取らないことも考えられます。

その場合には、供託といって、賃料を法務局の供託所に預け、保管を頼む手続があります。この方法を取れば賃料支払債務の不履行とはなりません。(ただし、供託を行う前に、契約の定めに従って、家主に家賃を現実に提供する必要があります。)

家賃の変更について家主と借主との間で話合いがまとまらない場合、家主としては、簡易裁判所に調停を申し立てることになると思われます。

さらに、調停で解決しなかった場合には、家主から訴訟を提起されることも考えられます。

なお、借主は、裁判が確定するまでの間、相当と認める額の家賃を支払うことをもって足ります。(上述の供託も弁済に含まれます)。

ただし、裁判で確定した賃料に、既に支払った額が不足する場合には、その不足額に年一割の遅延損害金を支払わなくてはなりません(借地借家法32条2項但書)。

<弁護士 山田恵>

借りているアパートの家賃の支払が厳しく、2ヶ月分滞納してしまったところ、家主から、賃貸借契約を解除すると言われました。 入居した時の契約書には、「契約に定める義務の履行を怠った場合には、相当の期間を定めて催告を行い、この催告を受けた者が期間内にその義務を履行しないときは、本契約を直ちに解除できる」と書かれています。出て行く先も決まっていないのですが、すぐに出て行かなくてはならないのでしょうか。

アパートを借りる契約は、当事者の一方(貸主)が他方(借主)に対してある物を使用・収益させることを約し、相手方がこれに対して賃料を支払うことを約する契約、すなわち賃貸借契約(民法601条)です。

賃貸借契約においては、貸主は目的物を使用収益させる義務を負い、借主は賃料支払義務を負っていますので、借主の家賃不払いは契約違反となります。

ただし、契約書上、家賃の不払いが契約解除事由とされていても、通常、不払いが契約違反となるのは、家主との信頼関係を破壊するに至る場合のみとされています。

滞納してしまった事情にもよりますが、2ヶ月の不払いでは、信頼関係が破壊される場合とまでは言えないと考えられます。通常、3ヶ月の賃料不払いが存在する場合には、信頼関係を破壊するものと言えるでしょう。

この場合、家主から採られる手段として、まず、相当な期間(通常1週間程度)内に未払い賃料を支払うよう催告され、さらに、その期間内に支払いがなければ債務不履行として契約を解除する、との通知(通常、内容証明郵便)があることが考えられます。

契約が解除されると賃貸借契約は終了するので、借主はアパートを明け渡さなければなりません。なお、明渡しの際には部屋を原状に回復する義務があります。

借主が任意に明け渡さない場合、賃貸人は法的強制力により権利の実現を図ることが考えられます。具体的には、裁判所に明渡し訴訟を提起し、勝訴判決に基づいて明け渡しの執行を請求し、執行官などの執行機関によって強制的に明渡しが行われることになります。

<弁護士 山田恵>

中学生の娘が学校で同級生からいじめにあっているようです。腕にあざを作って帰宅したことから娘に原因を聞き、発覚しました。クラスの担任の先生に娘がいじめにあっていることを連絡しましたが、そのような事実はないと言われました。しかし、その後もいじめはなくならないようです。いじめに対処する良い方法はないでしょうか。また、学校や相手方の親に対して法的に何らかの請求をしていくことはできるのでしょうか。

学校でのいじめは、休憩時間や放課後など、教師の目が届きにくい時間・場所において行われることが多いため、周囲に発覚しにくく、また、いじめを受けた子どもも、親や教師に相談できずに一人で悩んでしまうことも多いため、周りの大人も気付きにくいことが多いようです。

親としては、普段から、子どもとのコミュニケーションを大事にして、子どもが必要以上に小遣いをねだる、あざができているなど、恐喝や暴力などの被害にあっているサインを見過ごさないよう気をつけることが必要です。

そして、もしいじめの事実が発覚した場合には、教師や学校長など学校側に相談することが考えられますが、被害にあっている子ども自身が引き続いての登校を望んでいる場合、告げ口をしたとしてさらに被害が悪化しないとも限りません。子どもの意思を何よりもまず第一に尊重した慎重な対処が望まれます。なお、地域の弁護士会でも相談窓口を設けています。

クラス担任など学校の教師の協力を求め、加害生徒への個別指導をしてもらう、被害生徒がいじめにあう状況にならないよう監督してもらう、保健室登校やクラス替えをしてもらうなどの方法もあります。

ただし、相談しても、その教師の力不足などにより事態が改善しないこともありえます。クラス担任だけでなく、学年主任や教頭・学校長、場合によっては教育委員会などの公的機関に対処を求めることも考えられます。

加害者の親あるいは教師・学校は、子どもあるいは生徒に対する監督義務を負っています。したがって、いじめにより精神的あるいは身体的損害を被った被害者は、加害者の親あるいは教師・学校に対し監督義務違反として、損害賠償を請求したり、謝罪を求めたりすることができます。ただし、訴訟提起となると相手の親や学校と対立する姿勢が明確になり、以後の子どもの登校継続がしにくくなる危険もありますので注意が必要です。

<弁護士 山田恵>

今年、改正介護保険法が施行されて地域包括支援センターが設置されたと聞きましたが、地域包括支援センターというのはどういうもので、どのような役割があるのでしょうか。

今回の改正の柱となるものにはいくつかありますが、その中でも予防重視型システムの確立、新たなサービス体系の確立は重要なものの一つです。地域包括支援センターは後者に関係し、介護保険法第115条の39に規定されています。以下、厚生労働省の「介護保険制度改革の概要」に基づいてお話ししましょう。
予防重視型システムの確立は、介護予防に関するサービスを提供することにより状態の維持・改善を図ることを目的としています。これにより、増大する保険給付を減らす狙いもあります。新たなサービス体系の確立には、(1)地域密着型サービスの創設、(2)居住系サービスの充実、(3)地域包括ケア体制の整備、(4)中重度者の支援強化、医療と介護の連携・機能分担があります。(1)から(3)については、高齢者ができるだけ住み慣れた地域での生活が継続できるようにすることを目的としています。このうち、(3)の地域包括ケアというのは「概要」によれば、高齢者が住みなれた地域での尊厳のある生活を継続することができるよう、要介護状態になっても高齢者のニーズや状態の変化に応じて必要なサービスが切れ目なく提供される「包括的かつ継続的なサービス体制」をいいます。この体制を支える地域の中核的機関として創設されたのが「地域包括支援センター」です。
地域包括支援センターの運営は、市区町村、社会福祉法人、医療法人等、その他市区町村から委託を受けた法人が行います。職員体制は、保健師(又は地域ケアに経験のある看護師)、主任ケアマネジャー、社会福祉士の3つの専門職又はこれに準ずるものからなります。
地域包括支援センターの機能には、公正・中立の立場で行う(1)総合相談支援、(2)虐待の早期発見・防止などの権利擁護、(3)包括的・継続的ケアマネジメント支援、(4)介護予防ケアマネジメントがあります。このようにセンターに期待される役割機能は、かなり広範囲なものです。介護支援のみに限定されず、高齢者の権利擁護等も含まれています。そのため、今年4月に施行された「高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律」(高齢者虐待防止法と略称)においても地域包括支援センターが中核的機関として位置づけられています。
ところで、4月施行以来センターの職員はケアマネジメント業務に追われ、権利擁護業務が必ずしも十分に行われていない状況もあるようです。高齢者虐待については、介護疲れが原因とされる場合も多く、介護制度との関連を無視することはできません。65歳以上の高齢者3000人から6000人ごとに、3人の専門職種を配置するという基準もその妥当性について更に検討する必要があるかもしれません。

<弁護士 吉岡譲治>

(少年事件(3))
少年の刑事事件において、罪を犯した少年の処分はどのように決められるのでしょうか。成人の場合とは異なるのでしょうか。

成人の刑事事件の場合の手続は、事案の真相を解明し刑罰法令を適用実現することが目的とされています(刑事訴訟法1条)が、少年に対する処分(これを「保護処分」といいます)を決めるにあたっては特に、少年の健全な育成を期すことが目的とされています(少年法1条)。
すなわち、少年は精神的に未成熟でいまだ人格形成途上段階にあることや、環境を整えたり教育的な措置を与えることで矯正される(これを「可塑性」(かそせい)といいます)可能性が高いことから、再び非行に走ることを防止して社会復帰させるよう教育したり環境を整えたりすることが求められているといえます。
したがって、少年の処分は、成人の場合とはかなり異なる方法により決められることになります。
少年事件において、前回ご説明したように、捜査機関による捜査が終結し、検察官により事件が家庭裁判所に送致されると、家庭裁判所は24時間以内に観護措置の決定をします。観護措置は、延長を含め4週間で、観護措置期間のいずれかの日が審判期日として指定され、その審判廷で少年の処分が決められることになります。
事件を受理した家庭裁判所は、取調べの結果を記録した捜査記録を法的観点から調査します。
観護措置の期間中、少年鑑別所では、知能検査や心理テストなど各種の検査が行われます。これらの検査を通じて、少年の資質についての心身鑑別と行動観察が行われることになります。鑑別所ではこれらの鑑別の結果を「鑑別結果通知書」にまとめます。
また、家庭裁判所では調査官という、心理学等に通じた専門職の職員が、事件の捜査記録を読んだり、少年や家族との面接などを行ったりして、少年の性格や家庭環境について調査を行います。調査官は、その調査の結果と、鑑別所の鑑別結果通知書を参考に、処遇についての意見を「少年調査票」にまとめ、裁判官に報告します。
そして、裁判官は、事件の捜査記録である「法律記録」と鑑別結果通知書・少年調査票など少年の処遇を決める際参考となる「社会記録」、その他一切の資料を総合判断して審判を行います。
審判期日は通常一回で、少年の処遇も通常そこで決められることになります。 少年に下される具体的な処分の内容については、次回ご説明します。

<弁護士 山田恵>

(少年事件(4))
少年の刑事事件における、少年の処分の内容について教えてください。

前回ご説明したように、少年は精神的に未成熟であることや、可塑性が高いことなどから、罪を犯した少年を社会復帰させ健全な育成を図るため、少年に対する処分(これを「保護処分」といいます)については成人の場合とは異なる内容が定められています。
少年の保護処分には(1)保護観察決定、(2)児童自立支援施設・児童養護施設送致決定、(3)少年院送致の3つがあります。
保護観察とは、少年を施設に収容することなく、一定期間、保護観察所の保護観察官あるいは保護司のもとに定期的に通わせ、生活指導・監督を受けさせる処分です。
児童自立支援施設・児童養護施設は、不良行為をしたか又は今後するおそれのある児童や、家庭環境その他環境上の理由から生活指導を要する児童、保護者のいない児童、虐待されている児童その他環境上養護が必要とされる児童を入所させ、必要な指導を行い、あるいは養護して、その自立を支援する施設です。
少年院は、少年を収容し、生活指導や就業の為の教育を行う施設です。(1)初等(心身に著しい故障のない14歳以上おおむね16歳未満の者を収容する)、(2)中等(心身に著しい故障のないおおむね16歳以上20歳未満の者を収容する)、(3)特別(心身に著しい故障はないが、犯罪傾向の進んだおおむね16歳以上23歳未満の者を収容する)、(4)医療(心身に著しい故障のある14歳以上おおむね26歳未満の者を収容する)、の4種があります。
審判廷で非行事実が認められなかった場合には、保護処分に付しない「不処分決定」が下されます。
また、試験観察といって、上記の保護処分を決めるために必要があるとき、しばらくの間、家庭裁判所の調査官の観察下に置いて様子を見ることもあります。
なお、家庭裁判所は、死刑・懲役又は禁固に当たる罪の事件について、調査の結果、その罪質及び情状に照らして刑事処分を相当と認めたときは、事件を検察官に送致します(逆送といいます)。この場合、検察官は原則として、事件を起訴することになり、その後は成人の刑事事件と同じように刑事裁判(公判)が開かれることになります 。

<弁護士 山田恵>

最近、未成年者が自宅に放火して家族を焼き殺すというショッキングな事件が相次いでいますが、放火の罪はどのようになってますか?

これらの事件は、いずれも家族を殺す目的で放火して目的を達していますので放火罪のほか殺人罪にもなります。
放火の罪は、何に放火したかによって罪の重さが異なります。まず、人が住居として使用しているか、たまたま空き家でも現に人がいる一戸建てやビルなどの建造物、汽車、電車、艦船、鉱坑(石炭などを採掘するための坑道などをいいます)に放火した場合に罪が一番重くなります。これを「現住建造物等放火罪」といいます。この場合は、死刑又は無期もしくは5年以上の懲役が科せられます。これを法定刑といい、幅があります。裁判官は、この幅の中から種々の事情(これを情状といいます)を考慮して刑を宣告します(これを宣告刑といいます)。ですから、被告人の情状によって死刑を宣告されることもあれば、5年の懲役を宣告されることもあるのです。この法定刑は、「殺人罪」と同じなのです。「現住建造物等放火罪」がいかに重い罪かがわかります。
次に重いのは、空き家で現に人がいない建造物、艦船、鉱坑に放火したときです。これを「非現住建造物等放火罪」といいます。この場合は、2年以上の有期懲役が科せられます。最長は20年です。ただし、これには例外があって自分の所有物の場合は6ヶ月以上7年以下の懲役とされていますし、公共の危険が生じなければ罪となりません。もっとも、この場合でも自宅に火災保険を付けていたり、人に賃貸しているような場合は例外とされません。(公共の危険というのは、火事の現場に行くと隣の家に燃え移らないかとか、建物が崩壊してけが人が出るのではないかなど危険を感じますが、このようなことをいいます。)
今説明した放火罪の対象となっている物以外の物例えば自動車や飛行機などに放火して、公共の危険が生じたときは、1年以上10年以下の懲役が科せられます。ただし、これらが自分の所有物の場合は、1年以下の懲役か10万円以下の罰金が科せられます。例えば、公園で自分のごみを燃やしたりすると最悪の場合1年の懲役を科せられるということです。
なお、延焼罪という規定があって自分の物を燃やしてその結果建造物などに延焼したときは罪が重くなります。
以上のとおり、放火罪というのが大変重い罪であることがお判りでしょう。最近の事件では、家族が寝ている自宅に放火しているので「現住建造物等放火罪」となります。なお、14歳以上20歳未満の者については成人とは異なり少年法という法律によって処理されます。少年の事件については、別途解説がありますのでそちらを参照してください 。

<弁護士 吉岡譲治>

(少年事件(1))
17歳になる高校生の息子が、学校で友人に怪我をさせたことで逮捕されてしまいました。このようなことは初めてで、今後のことがわからず心配です。手続の進み方について教えてください。

刑法41条では、「14歳に満たない者の行為は、罰しない。」と規定されています。さらに、少年法では、その適用を受ける「少年」とは20歳に満たない者をいう、とされていますので、14歳以上20歳未満の少年が犯罪行為を犯して逮捕された場合、その後の手続や処分の決定については少年法の適用を受けることになります。
ただし、捜査段階においては、少年の刑事事件も、基本的には成人の場合と同様、刑事訴訟法の適用を受けます。
まず、司法警察職員(警察官)は、逮捕してから48時間以内に、少年、関係書類及び証拠物を検察官(刑事手続に関与し、刑事裁判において裁判所に審判を求める訴追の役割を負う公務員)に送ります(検察官送致)。
そして、検察官送致後24時間以内に、「勾留」されるかあるいは「勾留に代わる観護措置」が取られることになります。「勾留」とは逮捕に引き続いて少年の身柄を拘束する強制処分をいいます。「勾留」の場合、期間は最大10日間で、捜査の必要がある場合などさらに最大10日間の勾留延長があります。
他方、「勾留に代わる観護措置」とは、少年の身柄を少年鑑別所に拘束する措置をいいます。この場合、期間は最大10日間で延長はありません。
少年の身柄拘束は「勾留に代わる観護措置」が原則とされ、やむを得ない場合にのみ、例外的に「勾留」が認められています。しかし現実には、身柄の拘束場所が成人と同様の代用監獄(警察署の留置場)とされ、勾留延長の認められている「勾留」の手続が取られることが通常です。
少年であっても成人の場合と同様に、捜査官の取調べを受けます。取調べでは警察官・検察官などの捜査官が少年から事件について話を聴き取ります。
そして、捜査官は、聴き取った内容を「供述調書」にまとめます。これは後の裁判の重要な証拠となります。
供述調書ができると捜査官はその内容を少年に読んで聞かせ、供述者である少年がこれに署名し、指印することが求められます。このとき、内容が違っていれば訂正するよう求めることができ、さらにその内容に納得がいかない場合には、署名・指印を拒否することもできます。
次回は、弁護人の選任や捜査終結後の手続などについてお話しします 。

<弁護士 山田恵>

(少年事件(2))
逮捕・勾留された少年に対する捜査やその後の手続について教えてください。

少年事件の場合、弁護士は、少年が家庭裁判所に送致されるまでは「弁護人」として、事件が家庭裁判所に送致されてからは「付添人」として活動します。
共犯事件などの場合、接見禁止といって、少年と外部の者との面会が禁止されることがあります。しかし、弁護人または弁護人になろうとする者は、立会人なしに少年と面会することができます(これを接見交通権といいます)。
弁護士の知り合いがいなくても、弁護士会に「当番弁護士」を依頼すれば、当番として待機している弁護士が初回のみ無料で接見に赴き、少年の相談にのります。なお、少年は、保護者の意思に反しても、独自の判断で弁護士を依頼することができます。
初回の接見後も継続的に弁護活動を依頼したい場合は、弁護士費用がかかりますが引き続き弁護活動を依頼することができます。
弁護士費用を支払う資力のない場合でも、法律扶助協会の被疑者弁護援助制度、付添人扶助制度といって、弁護士費用を立て替えてもらえる制度がありますので、その制度を利用できないか弁護士に相談してみるとよいでしょう。
成人の刑事事件では、犯罪を犯した事実は認められても事件が軽微であったり被害者と示談が成立した場合などには、検察官が裁判所に審判を求める「起訴」の手続をとらずに不起訴とする、「起訴猶予」処分をとることがあります。
しかし、少年事件の場合、捜査終結した後、検察官はすべての事件を家庭裁判所に送致します(全件送致主義といいます)。
送致を受けてから24時間以内に、家庭裁判所は「観護措置」の決定を下します。 「観護措置」とは、少年の処遇が最終的に決定されるまでの間、少年の身柄を確保し、少年の適切な処分を決めるための心理テストなどの心身の検査を行うため、家庭裁判所の調査官の観護に付するか少年鑑別所に送致する措置を言います。
現状では、少年鑑別所への送致が行われるのが通常で、少年の身柄も鑑別所に収容されるのが通常です。
この観護措置は原則として2週間で、さらに2週間の更新があります。この4週間の観護措置期間のいずれかの日が家庭裁判所の審判期日として指定されます。この審判廷において、最終的に少年の処分が決められることになります。 次回以降、観護措置の内容や審判廷で下される処分の内容についてお話しします。

<弁護士 山田恵>

友人が、1年前に怪我をして入院しました。仕事はアルバイトだったのでその日から収入が途絶え、やむなくサラ金からお金を借りたのですが、退院後も怪我の治療のため通院しなければならず仕事ができる日数が少なくなり収入も減少したため返せなくなりました。しばらくは、他のサラ金から借りてそれを返済に充てていたのですが、とうとうそれも行き詰ってしまい困っています。近頃は、ヤミ金からも借り入れているようで、取立てが厳しく毎日怯えています。債務は総額で200万円と聞いています。どのようにアドバイスしたらいいのでしょうか。

友人は、大変な状況になりました。
債権者には、サラ金のほか、銀行やクレジットカード会社があります。また、違法な業者としていわゆるヤミ金融があります。業として、人に金銭を貸すためには財務局、都道府県への登録が必要とされています。気を付けなければならないのは、登録業者だからといって違法業者ではないとはいえないことです。例えば、東京都に登録している業者の中にも多くのヤミ金融業者がいます。「ヤミ」というのは、隠れて金を貸しているということではなく、違法な金利を徴収し、返済が滞れば脅迫的な取立てをしたり、自宅や勤務先に取り立てに行くといった違法行為を繰り返す業者の意味です。昨年の、法律改正でこのようなヤミ金融業者はかなり減少しましたが、残っている業者はむしろ更に悪質化しているようです。ご質問の友人は、このようなヤミ金からも借り入れているようです。借金をする人の傾向を見ていると、最初は通常のカード会社やサラ金から借り入れをしますが、返済が滞ると信用情報リストに記録されるためカード会社やサラ金からは借り入れができなくなります。このような人は、仕方なくヤミ金融業者から借り入れてしまうのです。
友人は、ヤミ金融業者から借り入れをし、厳しい取立てを受けているということです。このような状況になってくると自分で解決することはまず無理です。各都道府県には、弁護士会がありそこで法律相談を行っています。特に、東京では多重債務者のための専門の相談センターが設けられ対応しています。まず、専門家に相談しましょう。弁護士は、債務者から委任を受けると債権者に受任の通知を送付します。これで、通常のサラ金業者などからの直接の取立てはなくなります。但し、悪質なヤミ金融業者の中には、なお取立てを続ける者もあります。その場合は、依頼した弁護士に対応してもらってください。
多重債務に陥った人の債務を処理することを「債務整理」といいます。債務整理には、任意整理、自己破産、民事再生などいくつかの方法があります。ある程度返済資力のある場合は、債権者と交渉して長期分割で返済をする任意整理という方法を選択します。この場合は、高金利を利息制限法の利率に引きなおして交渉しますから長期間借り入れをしているような場合は過払い状態となっていることもあります。なお、収入が安定しているような場合は民事再生手続を選択することがあります。これは、裁判所の力を借りて一定の割合の債務を長期分割で返済する方法です。しかし、収入が無く、あるいは安定していない、返済原資が出ないといった場合は、自己破産を選択することになります。これは、裁判所に自ら破産を申し立てて最終的に免責の決定をもらい返済を免れる方法です。これは、債権者を犠牲にして債務者の再スタートを図る制度です。そのため、借り入れたお金をギャンブルやブランド品の購入資金にのみ当てたり、債権者をだまして借り入れをしたりしたような場合は免責がもらえません。また、不動産などの資産がある場合は、管財人が選任され資産を処理して債権者に配当することになります。
ご質問の友人の場合は、収入はアルバイトからということです。おそらく自分の生活費で使い果たすでしょう。初めての借り入れが、入院のころですから約1年前です。そうすると、過払い金が発生することは考えられません。そうすると、自己破産を選択するのが相当ということになるでしょう。ヤミ金融業者に対しては、依頼した弁護士に対応してもC?らいましょう。なお、自己破産の手続は自分でもできますが、東京地方裁判所の場合即日面接方式を採用しており、手続が速やかに進められ早期処理が可能です。ただし、これは弁護士が代理人として行なうことになっています。また、費用が無い場合は、法律扶助協会(平成18年10月からは、日本司法支援センターに引き継がれます)による立替制度もありますので、これを利用しましょう 。
(つづく)

<弁護士 吉岡譲治>

私の夫は、私とささいなことで口論になったとき、私に対し殴る蹴るなどの暴力を振るうことがあります。私はそのような場面をまだ幼い子どもに見せたくありませんし、私自身、身の危険を感じるようになりました。新聞で以前、夫からの暴力を防止するための法律ができたと目にしたことがあるのですが、それはどのような法律なのでしょうか。夫の暴力から逃れることができるのでしょうか。

従前、家庭内のもめごとに対しては、警察など国家権力がみだりに介入すべきではないという民事不介入の原則という考え方があり、夫からの暴力は犯罪となる重大な人権侵害であるにも関わらず、法的な救済が必ずしも十分に行われてきませんでした。
しかし、1980年代から、女性や子どもなど弱者に対する暴力が国際的な問題として取り上げられるようになり、わが国でも核家族の増加、都市化により家庭内のトラブルに対し地域での監視が及びにくくなったことや、不況や失業の増加など社会的なストレスが妻や子どもなど肉体的弱者に対する暴力の増加となって現れてきたことなどから、これに対する新たな法制度の整備による救済の必要性が検討されるようになりました。
そして、2001年4月、「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する法律」(いわゆるDV防止法)が制定されました。
DV(ドメスティック・バイオレンス)とは、一般には夫など身近なパートナーから受けるあらゆる形態の暴力を指します。
DV防止法の対象となるDVの加害者は、配偶者及び婚姻の届出をしていないが事実上婚姻関係と同様の事情にある者を含みますので、内縁関係にある者を含みますが、単なる恋人であるというだけでは対象となりません。
本法の大きな柱として、「保護命令」の制度があります。これは、配偶者から身体に対する暴力を受けたことがある被害者が、さらに配偶者(元配偶者を含む)からの生命または身体に対する暴力により生命または身体に重大な危害を受けるおそれが大きい場合に、裁判所が被害者の申立てによって被害者の生命または身体の安全を確保する制度です(DV防止法第10条)。
保護命令には「接近禁止命令」と「退去命令」があります。「接近禁止命令」とは、加害者である配偶者に対し、命令の効力の生じた日から起算して6ヶ月間、被害者の身辺につきまとい、又は被害者が通常所在する場所の付近をはいかいすることを禁止するものです。「退去命令」とは、命令の効力が生じた日から起算して2ヶ月間、同居生活を送っていた住居付近をはいかいすることを禁止するものです。
但し、保護命令は、身体に対する暴力により生命又は身体に重大な危険のあるおそれが大きい場合に限定されており、精神的暴力の場合は除外されています。
また、本法では、配偶者暴力相談支援センターについても規定が置かれています。同センターは、配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護を図るための業務を行う施設で、各都道府県が設置する婦人相談所その他の適切な施設です。
ここでは、被害者の相談にのったり被害者が安全に生活できるように一時保護を行ったりする他、就業の促進や各種情報の提供、関係諸機関との連絡調整などの業務を行います。
さらに本法では、配偶者からの暴力を受けている者を発見した者に対し、上記センター又は警察官への通報義務が課されています。
ご相談の場合、あなたは夫から身体に対する暴力を受け、身の危険を感じているとのことですので、できるだけ早く警察や配偶者暴力相談支援センターに相談することをお勧めします。場合によっては保護命令の申立をするべきでしょう。

<弁護士 山田恵>

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