3.
まず、学生の合否情報を学内に掲示するという利用形態について検討します。前記のとおり利用目的はできる限り特定しなければなりませんが、その趣旨は、利用目的の達成のために必要最小限の範囲で個人情報を取り扱わせることにあるとされています(宇賀・81頁)。そうすると、合否情報を学内に掲示するという利用が学生の教育、指導監督等合理的な目的の範囲といえるかどうかが問題となります。この点については、法的観点というよりは、教育的観点から判断されるべきでしょう。この点について学校において十分に議論を尽くし結論が出されているのでしょうか。
学内に掲示をしなくとも、例えば個々の学生に対して合否情報を通知することで目的を達成することが可能であれば掲示そのものを取りやめることも検討すべきでしょう。
そこで、本稿では学内の掲示が利用目的として合理的であるということを前提に、更に検討を続けることとします。利用目的として合理的であるけれども、取得の状況から見て明らかとまではいえないのであれば、公表するか、本人に通知しておけば「利用」に関しては問題ないということになります。
4.
学校内に合否を掲示して学生に情報を提供することが、第三者への提供に当たるのではないかという点について検討してみましょう。
個人情報保護法23条は、事業者が個人データを第三者に提供する場合は、事前に本人の同意を得なければならないとしています。事業者が主体となっていることから、事業者内部でその構成員に開示する場合は、第三者提供には該当しないと考えられます。厚労省ガイドラインでも「同一事業者内で情報提供する場合は、当該個人データを第三者に提供したことにはならない」としています。
学生は、教職員とともに学校の人的組織の構成員です。そうしますと、合否を学校内に掲示することは学校という事業者内部での情報提供になりますから、第三者提供には該当しないことになります。
5.
以上を整理すると、学校内に学生の合否情報を掲示することは、その旨利用目的として公表してあれば問題がないということになります。実際には、入学時に文書等で学生と父兄に通知することが多いと思われます。
次に問題となるのは、このように学生の合否情報を掲示した結果、学生等を通じて学外にその情報が漏えいしないかということです。これは、安全管理措置の問題です。
6.
法は、事業者が、その取り扱う個人データに対して必要かつ適切な安全管理措置をとるよう求めています(法20条)。事業者が従業者に個人データを取り扱わせるときは、必要かつ適切な監督を行なわなければなりません(法21条)。
学校(事業者)が、学生の合否を学内の掲示板により公開することについて学生本人に事前に公表するか、通知していれば、そもそも漏えいの問題は生じないといえます。なぜなら、公開と漏えい禁止とは相容れないからです。
また、氏名を公開の対象としないのであれば前記のとおり匿名での公開となる可能性があるため、個人データの公開には該当しないことになります。
そうすると、安全管理措置として問題となることは原則としてないと考えられます。
7.
以上のとおり、学生の合否を学内の掲示板に掲示して公開することは、事前に学生(できれば父兄も)に公表していれば、個人情報保護法上は特に問題にはならないということになります。
しかし、これはあくまでも個人情報保護法に関する限りということであって、プライバシーの侵害に当たるかどうかは別の検討が必要です。